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中海と宍道湖のうなぎ|汽水湖が育てた地域の食文化

中海

宍道湖や中海に、うなぎがいることをご存じでしょうか。宍道湖といえばしじみの印象が強いですが、実はうなぎも古くから漁獲されてきた魚のひとつです。なぜ海ではない湖にうなぎがいるのか。その理由をたどると、中海・宍道湖ならではの汽水環境とうなぎの生態、そして地域の食卓に根付いてきた文化が見えてきます。

鰻師 卓

宍道湖にうなぎだって?そう驚く人も多いだろうよ。実はこの湖、昔からうなぎと縁が深ぇんでぇ!

宍道湖や中海には、本当にうなぎがいる?

宍道湖や中海では、古くから天然のうなぎが漁獲されてきました。

現在も宍道湖ではうなぎ漁が行われており、うなぎはこの地域の水辺に暮らしてきた魚のひとつです。「湖にうなぎ?」と不思議に感じるかもしれませんが、その理由はニホンウナギの一生と、中海・宍道湖の水環境を知ると見えてきます。

川だけで暮らす魚ではないニホンウナギ

うなぎというと「川魚」のイメージがありますが、ニホンウナギは川だけで一生を過ごす魚ではありません。

遠くマリアナ諸島西方の海域で生まれ、成長しながら東アジアの沿岸へやってきます。その後、川へ上る個体もいれば、河口や汽水域、沿岸部などで成長する個体もいます。

つまり、海と川の途中にある中海や宍道湖も、うなぎが利用できる環境のひとつなのです。

うなぎが暮らす中海・宍道湖はどんな場所?

宍道湖

中海と宍道湖は、一見すると別々の湖ですが、水の流れではひと続きです。

斐伊川などから宍道湖へ流れ込んだ淡水は、大橋川を通って中海へ向かい、さらに境水道を経て日本海へとつながります。一方、日本海側からは海水も入り込むため、両湖には淡水と海水が混ざり合う「汽水」の環境が生まれています。

この「川・湖・海がつながっている」という地形が、中海・宍道湖とうなぎの関係を知る大きな手がかりです。

塩分の違う水域がひとつにつながる汽水湖

同じ汽水湖でも、宍道湖と中海の水はまったく同じではありません。

河川の影響を受ける宍道湖は比較的淡水に近く、日本海に近い中海ほど塩分が高くなります。さらに水深や場所によっても塩分は変わり、一つの水系のなかにさまざまな環境が広がっています。

そこにはヤマトシジミをはじめ、スズキやボラなど、汽水域を利用するさまざまな生き物が暮らしています。

「湖」「川」「海」と区切って見るより、ひと続きの水辺として見ると、中海や宍道湖にうなぎがいることもそれほど不思議ではありません。

宍道湖ではうなぎも「七珍」のひとつ

宍道湖七珍

宍道湖と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、やはりしじみではないでしょうか。

ところが、宍道湖の代表的な湖の幸を表す「宍道湖七珍」には、スズキ、モロゲエビ、うなぎ、アマサギ、シラウオ、コイ、シジミが数えられています。

うなぎもまた、宍道湖の恵みとして親しまれてきた魚のひとつだったのです。

汽水湖の恵みがそのまま地域の食卓へ

今のように全国各地から食材を運べる時代になる以前、日々の食卓は身近な自然と今よりずっと強く結びついていました。

湖でしじみが獲れればしじみを食べ、シラウオが獲れればシラウオを味わい、うなぎが獲れればうなぎを料理する。

宍道湖七珍には、そんな湖と暮らしの距離が近かった時代の食文化が残っています。

宍道湖にうなぎがいるという事実は、珍しい生き物の話というだけではありません。そのうなぎを獲り、食べてきた人々の暮らしまで含めて、この地域らしい風景だったのです。

国産・超特大280gうなぎを使用した山美世のうな重

現在も宍道湖に暮らす天然うなぎ

水中のうなぎ

宍道湖では現在もうなぎ漁が行われており、天然うなぎが暮らす水辺であることに変わりはありません。

一方で、ニホンウナギを取り巻く環境は昔と同じではなく、生息地の減少や移動を妨げる構造物など、さまざまな課題も指摘されています。

海・湖・川のつながりがうなぎを支える

うなぎは、一つの川や湖だけで一生を過ごす魚ではありません。海から沿岸へやってきて、河口や汽水域、河川などを利用しながら成長し、やがて再び海へ向かいます。

中海や宍道湖にうなぎが暮らせる背景には、日本海から境水道、中海、大橋川、宍道湖、さらに流入河川へと水域がつながっていることがあります。

こうした水のつながりは、海と川を行き来するうなぎにとって大切な環境のひとつです。現在もうなぎが暮らす水辺として見ると、中海・宍道湖の存在がより身近に感じられます。

中海に浮かぶ大根島とうなぎ処 山美世

山美世の外観

山美世が店を構える大根島も、この中海に浮かぶ島です。

うなぎ処 山美世は大正三年に創業し、110余年にわたり大根島でうなぎ料理を提供してきました。

ただし、現在山美世で提供しているうなぎが「中海産の天然うなぎ」というわけではありません。

現在は国産うなぎを仕入れて大根島で調理

現在、山美世では鹿児島県や愛知県などから国産うなぎを仕入れ、大根島の地下水で状態を整えてから、一尾ずつ焼き上げています。

中海の天然うなぎが地域の商いを支えていた時代と、全国各地から良質なうなぎを仕入れられる現在とでは、うなぎ屋を取り巻く環境も変わりました。

それでも、中海の水辺で長くうなぎ料理を提供してきたという土地とのつながりは、山美世の歴史を知るうえで欠かせません。

山美世の創業から現在までの歩みや、大根島の地下水、受け継いできた地焼きについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

また、現在使用しているうなぎの産地について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

鰻師 卓

「湖にうなぎ?」ってぇ驚きの先に、その土地の暮らしまで見えてくる。水辺と食のつながりってぇのは面白ぇもんだ!

まとめ|中海・宍道湖とうなぎがつないできた食文化

宍道湖や中海には、古くから天然のうなぎが暮らし、人々はその恵みを食文化として受け継いできました。その背景にあるのが、海と川がつながり、淡水と海水が混ざる汽水湖ならではの環境です。

宍道湖ではうなぎが「宍道湖七珍」のひとつに数えられ、しじみやシラウオと同じように、湖の恵みとして人々の暮らしに根付いてきました。

「湖にうなぎがいる」という意外な事実から、生き物の生態、汽水湖の環境、そして地域の食文化へ。中海と宍道湖を知ると、島根とうなぎの関係が少し違って見えてきます。

山美世のうなぎ

届くのは、老舗の仕事。

うなぎ処 山美世 六代目店主 渡部 卓

島根県松江市にて大正時代から続く「山美世」の現当主。 代々続く秘伝のタレを守りつつ、脂を落とさず鰻本来の旨味を引き出す「地焼き(関西風)」の技術を研鑽。「鰻は生き物であり、一尾として同じ個体はない」という信念のもと、季節や個体差に合わせた火入れを徹底。

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