うなぎにもオスとメスがありますが、性別によって味や食感に違いがあることは、あまり知られていません。近年は、大きく育てても身が柔らかい「大型メスうなぎ」が登場し、養殖技術の面からも注目を集めています。この記事では、うなぎのオスとメスの違いや性別が決まる仕組み、味との関係を、うなぎ専門店の視点から分かりやすく解説します。
オスかメスかで味が決まるほど、うなぎは単純じゃねぇ。まずは違いをきっちり見ていこうじゃねぇか!
うなぎのオスとメスで味は違う?
近年の研究では、大型に育てたメスうなぎは身が厚く、柔らかさや脂の乗り、ふっくら感で高く評価される傾向が示されています。ただし、すべてのメスが同じ味になり、オスより必ず美味しくなるという意味ではありません。
研究で分かった大型メスうなぎの食味
愛知県水産試験場などの研究では、約400gまで育てた大型メスうなぎと、約200gの通常サイズのオスうなぎを食べ比べています。
その結果、大型メスは脂の乗り、身の柔らかさ、ふっくら感などの項目で高い評価を受けました。機器による測定でも、身が厚く柔らかいことや、うま味に関係する成分が多い傾向が示されています。
大きく育てても柔らかさを保ちやすい大型メス
一般的な養殖うなぎのオスは、大きく育てると身や皮が硬くなりやすいため、200~250g前後で出荷されることが多くなっています。
一方、メスは400~500gほどまで育てても身の柔らかさを保ちやすく、肉厚でふっくらとした蒲焼に仕上がる点が特徴です。一尾から取れる可食部が増えるため、限られたシラスウナギ資源を有効に使う方法としても注目されています。
性別だけでは決まらないうなぎの味
研究結果を見る際に注意したいのは、大型メスと通常サイズのオスでは、性別だけでなく魚体の大きさや育成期間も違うことです。
うなぎの味や食感には、育った環境、魚体の大きさ、脂の乗り、出荷時の状態、仕込み方、焼き方なども関係します。メスだから必ず柔らかく、オスだから必ず硬いと分けられるものではありません。
山美世でも、性別や産地名だけで仕入れを決めず、その時期の身質や脂、皮の状態を見ながら、地焼きに合ううなぎを選んでいます。
養殖うなぎにオスが多い理由
現在流通している養殖ニホンウナギの多くはオスです。一般的な養殖環境では、育ったうなぎの9割以上がオスになることもありますが、性比が大きく偏る詳しい仕組みは、まだ完全には解明されていません。
成長途中で進むニホンウナギの性分化
ニホンウナギは、シラスウナギの段階で外見からオスとメスを判別できるわけではありません。成長する途中で生殖腺が卵巣または精巣へと分化していきます。
性分化に関係する飼育環境と成長速度
うなぎの性分化には、成長初期の飼育環境や成長速度などが関係すると考えられています。
養殖場を調べた研究では、成長の速い出荷群ほどオスの割合が高く、成長が比較的緩やかな群ではメスが含まれる割合が高い傾向も確認されました。
ただし、「狭い池のストレスでオスになる」と単純に説明できるものではありません。水温や飼育密度、餌、成長速度など、複数の条件が関係している可能性があり、現在も研究が続けられています。
天然うなぎにも見られる性比の違い
天然のニホンウナギも、すべての河川でオスとメスが同じ割合で生息しているわけではありません。
河川の規模や餌の量、成長環境などによって性比が異なると考えられており、河川の上流や成長しやすい環境では、大型のメスが見つかることがあります。
養殖だけでなく、天然うなぎについても、育つ環境と性分化の関係は研究途上にあります。
大豆イソフラボンから生まれた大型メスうなぎ
養殖うなぎの大半がオスになるという課題を受け、愛知県水産試験場などの研究グループは、大豆イソフラボンを利用してメスへの分化を促す養殖技術を開発しました。
餌でメスへの分化を促す養殖技術
この技術では、性別が分化する前のシラスウナギに、大豆イソフラボンを配合した餌を一定期間与えます。
成長したオスを後からメスに変える技術ではなく、生殖腺が形成される過程で、メスへの分化を促す仕組みです。
90%以上の雌化率を実現
研究では、大豆イソフラボンを配合した餌を使うことで、養殖うなぎの90%以上をメスに育てることに成功しています。
これにより、400g以上まで育てても身が柔らかい大型メスうなぎを、計画的に生産しやすくなりました。研究成果をもとに、養殖現場で使いやすい配合飼料の開発や、生産方法の普及も進められています。
愛知県のブランド「葵うなぎ」
愛知県では、この技術を使って育てた大型メスうなぎを「葵うなぎ」としてブランド化しています。
葵うなぎは、愛知県内で特許技術を用いて育てられたうなぎのうち、一定の重量などの基準を満たしたものです。肉厚で脂が乗り、大きく育てても身が柔らかいことが特徴として紹介されています。
すべての愛知県産うなぎが葵うなぎになるわけではなく、決められた生産方法や出荷基準を満たす必要があります。
限られたシラスウナギを有効に使う技術
大型メスうなぎが注目されている理由は、味や見た目の大きさだけではありません。
現在のうなぎ養殖は、天然で採捕したシラスウナギに大きく依存しています。一尾を大きく育てて可食部を増やせれば、同じ尾数からより多くの蒲焼を生産できます。
大型メスうなぎの養殖は、限られた資源を有効に使いながら、肉厚で柔らかいうなぎを生産する取り組みでもあります。
うなぎのオスとメスは見分けられる?
生きたうなぎを見ても、一般の人が頭の形や体つきから性別を判断するのは困難です。うなぎを日々扱う職人であっても、外見だけで正確に見分けられるものではありません。
外見だけでは難しいうなぎの雌雄判別
ニホンウナギは、成熟するまでオスとメスの外見的な違いがはっきり現れにくい魚です。
大きな個体にはメスが多い傾向がありますが、魚体の大きさだけで性別を確定することもできません。
頭の形や体の太さは判定基準にならない
「頭が細長いものはオス」「胴体が丸く太いものはメス」といった見分け方が紹介されることがあります。
しかし、頭の形や体の太さには、性別だけでなく個体差、成長段階、餌、飼育環境なども影響します。外見だけを見て、オスとメスを正確に判断する方法とはいえません。
研究や養殖の現場では、生殖腺を観察したり、性分化に関係する遺伝子の発現を調べたりして判定します。
蒲焼から性別を見分けるのはさらに困難
蒲焼になった状態から、オスとメスを見分けることも困難です。
身の柔らかさや皮の食感には、性別のほか、魚体の大きさ、脂の乗り、下処理、焼き方、加熱時間などが関係します。ふっくらしているからメス、歯ごたえがあるからオスと判断することはできません。
オスかメスかも面白ぇ話だが、最後にものを言うのは一尾の状態と焼き手の腕よ。そこを忘れちゃ野暮ってもんだ!
まとめ:性別を知ると、うなぎの見方が少し変わる
うなぎのオスとメスには、成長後の大きさや身の柔らかさに違いが見られます。特に大型メスうなぎは、肉厚でふっくらとした食感を保ちやすく、限られたシラスウナギ資源を有効に使える存在としても期待されています。
山美世が大切にする一尾ごとの見極め
大型メスうなぎは、柔らかさや脂の乗りで高く評価される傾向があります。ただし、うなぎの美味しさを決めるのは性別だけではありません。
産地や育った環境、魚体の大きさ、脂の状態、仕込み、焼き方が重なり、一皿の味が生まれます。
島根県松江市・大根島の山美世では、主に鹿児島県や愛知県から、その時期に状態の良い国産うなぎを仕入れています。仕入れたうなぎは大根島の地下水で数日間泳がせ、一尾ごとの身質や脂を見ながら、蒸さずに地焼きで仕上げます。
大型メスうなぎに出会ったときは、肉厚な身や柔らかな食感とともに、養殖技術や資源利用の工夫にも注目してみてください。普段のうなぎ選びでは、性別だけにとらわれず、素材をどのように見極め、どのような焼き方で仕上げているかを見ることが、自分好みの一尾に出会う近道です。
山美世のうなぎ
届くのは、老舗の仕事。




















