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うなぎに山椒をかけるのはなぜ?蒲焼と相性が良い理由を老舗が解説

うなぎに山椒をかけるのはなぜ?

うなぎの蒲焼きに、なぜ山椒をかけるのか。何気なく使っている薬味ですが、そこには川魚特有の香りを和らげ、脂の濃厚さをさっぱり整える昔ながらの知恵があります。この記事では、うなぎと山椒の歴史や相性の理由、美味しさを引き立てるかけ方、山椒を使わない楽しみ方まで、老舗の視点からわかりやすく解説します。

鰻師 卓

へい、うなぎに山椒ってぇのは、ただのクセじゃねぇ。旨さを引き立てる昔ながらの知恵なんだよ!

うなぎに山椒をかける理由

うなぎに山椒をかける理由

うなぎに山椒を合わせる習慣には、昔ながらの食の知恵があります。もともとは、川魚特有の香りを和らげる薬味として使われてきたと考えられています。

現在は養殖や下処理、焼きの技術が進み、昔ほど泥臭さを感じるうなぎは少なくなりました。それでも山椒が添えられ続けているのは、臭み消しだけでなく、蒲焼きの味わいを引き立てる役割があるからです。

甘辛いタレ、香ばしい焼き目、脂の旨み。そこに山椒の爽やかな香りと軽い刺激が加わることで、後味がすっきり整います。濃厚なうなぎを最後まで飽きずに味わいやすくしてくれる、名脇役のような薬味です。

川魚特有の香りを和らげる

うなぎは川や湖などに生息する魚で、昔は天然ものが中心でした。そのため、個体や環境によっては川魚特有の香りや泥っぽさを感じることもあったと考えられます。

山椒には、柑橘を思わせる爽やかな香りがあります。この香りがうなぎのクセをやわらげ、食べやすくしてくれるため、古くから重宝されてきました。

脂の濃厚さをさっぱり整える

うなぎの蒲焼きは、脂の旨みと甘辛いタレのコクが魅力です。一方で、食べ進めるうちに少し重たく感じることもあります。

山椒を少量合わせると、ピリッとした刺激と爽やかな香りが脂の余韻を整え、後味を軽くしてくれます。濃厚な味わいを消すのではなく、うなぎの美味しさを引き締めてくれるのが山椒のよいところです。

香りと辛みで食べやすくする

山椒の辛み成分として知られるサンショオールには、独特のピリッとした刺激があります。この刺激や香りは食欲を引き立て、脂の多いうなぎをさっぱり食べやすくしてくれるとされています。

ただし、山椒は薬ではありません。「消化が良くなる」「胃もたれしない」と言い切るのではなく、料理を美味しく楽しむための薬味として紹介するのが自然です。

うなぎと山椒の歴史

うなぎと山椒の歴史

うなぎと山椒の関わりは古く、室町時代の料理書には、丸焼きにしたうなぎに山椒味噌を添える記述が見られます。

現在のように、蒲焼きの上から粉山椒を振る食べ方とは形が違いますが、うなぎの風味を整える薬味として、山椒が古くから使われていたことがうかがえます。

その後、江戸時代に入ると、うなぎを開いて串に刺し、タレをつけて焼く現在に近い蒲焼きが広まっていきました。甘辛いタレの香ばしさと、山椒の爽やかな香り。その組み合わせが、うなぎ料理の定番として少しずつ親しまれていったと考えられます。

室町時代の料理書に見られる山椒味噌

うなぎに山椒を合わせる食文化は、かなり古くから見られます。

室町時代の料理書には、丸焼きにしたうなぎに山椒味噌を添える内容が残されているとされます。今のような粉山椒ではなく、味噌と合わせた形ですが、うなぎの香りを整えるために山椒が使われていたことがわかります。

現在の粉山椒とは形が違う

ここで注意したいのは、室町時代から現在と同じように粉山椒を蒲焼きに振っていた、という意味ではないことです。

昔は調理法もうなぎの食べ方も今とは異なります。あくまで、うなぎと山椒を合わせる発想が古くからあった、という捉え方が自然です。

江戸時代に広まった蒲焼き文化との関係

江戸時代に入ると、うなぎを開いて串に刺し、タレをつけて焼く現在に近い蒲焼きが広まっていきました。

甘辛いタレの香ばしさと、うなぎの脂の旨み。そこに山椒の香りが加わることで、後味がすっきりします。

「山椒が江戸で大流行した」とまで言い切る必要はありませんが、蒲焼き文化が広まるなかで、山椒も薬味として親しまれていったと考えると自然です。

うなぎと山椒の相性が良い理由

【うなぎ】山椒をかけるのは身?それともご飯?

うなぎと山椒の相性が良い理由は、大きく分けると「香り」と「後味」にあります。

うなぎの蒲焼きは、焼き目の香ばしさ、脂の甘み、タレのコクが重なった濃厚な料理です。そこへ山椒を少し加えると、味全体が引き締まり、香りに奥行きが生まれます。

山椒は、うなぎの旨みを隠すものではありません。かけすぎなければ、むしろ蒲焼きの味を引き立てる存在になります。

甘辛いタレと山椒の香りがよく合う

蒲焼きのタレは、醤油やみりん、砂糖などを使った甘辛い味わいが基本です。

そこに山椒の爽やかな香りが加わると、タレの甘みが少し引き締まり、後味がすっきりします。

甘さ、香ばしさ、脂の旨み。その中に山椒の香りが入ることで、味にメリハリが出ます。特にタレが濃いめの蒲焼きや、脂ののったうなぎには、山椒がよいアクセントになります。

地焼きの香ばしさにもよく合う

関西や山陰地方などで親しまれている地焼きは、蒸さずに焼き上げるため、皮目の香ばしさや脂の旨みをしっかり感じやすい焼き方です。

この力強い味わいに山椒を合わせると、香ばしさがより引き立ちます。脂の余韻も軽くなり、ひと口ごとの印象がすっきりします。

山椒をかけすぎると香りが勝ってしまう

地焼きのうなぎは、焼き目の香ばしさやタレの風味も魅力です。

そのため、山椒をかけすぎると、せっかくの焼きの香りが隠れてしまうことがあります。地焼きのうなぎほど、山椒は少量を上手に使うのがおすすめです。

山椒を美味しく使うかけ方

山椒のかけ方

山椒は、たくさんかければよいというものではありません。

うなぎの味をしっかり楽しみたいなら、まずは何もかけずに一口味わってみるのがおすすめです。焼き目の香ばしさ、タレの濃さ、脂ののりを確かめてから、山椒を少しずつ足すと、自分に合ったバランスが見つかります。

山椒は主役ではなく、うなぎを引き立てる薬味です。控えめに使うことで、香りのよさがより活きてきます。

まずは何もかけずに一口味わう

専門店でうなぎを食べるなら、最初の一口は山椒をかけずに味わってみてください。

うなぎそのものの香り、焼き加減、タレの甘辛さ、脂の旨みがよくわかります。そのうえで山椒を少量足すと、味の変化を楽しめます。

最初から全体に山椒を振ってしまうと、うなぎ本来の香りがわかりにくくなることがあります。まずはそのまま、次に山椒を少し。この順番にすると、うなぎの美味しさをより深く味わえます。

身に直接かけすぎない

山椒をかけるときは、うなぎの身に直接たっぷり振るよりも、少量を控えめに使うのがおすすめです。

身の表面にはタレがまとっています。そこへ山椒をかけすぎると、タレの香りや焼き目の風味よりも、山椒の刺激が前に出てしまいます。

軽くひと振りする程度でも、山椒の香りは十分に広がります。足りないと感じたら、食べながら少しずつ足すくらいがちょうどよいでしょう。

ご飯や皮側に少量添える食べ方もある

山椒の香りをやわらかく楽しみたい場合は、うなぎの身の上ではなく、ご飯に少量振る食べ方もあります。

ご飯に山椒を忍ばせると、うなぎを口に入れたあとから、ふわっと香りが追いかけてきます。タレの味や身の旨みを邪魔しにくく、全体のまとまりもよくなります。

皮目の香ばしさと合わせる

うなぎを少しめくって、皮側に山椒を少量添える食べ方もあります。

皮目の香ばしさと山椒の香りが重なり、味わいに奥行きが出ます。特に地焼きのように皮目の香りを楽しみたい蒲焼きには、試してみたい食べ方です。

山椒がないときに合う薬味

自宅でうなぎを食べるとき、付属の山椒がなかったり、使い切っていたりすることもあります。

そんなときは、別の薬味を合わせても美味しく楽しめます。山椒とは違う香りや辛みが加わることで、いつもの蒲焼きとは少し違った味わいになります。

ただし、薬味はあくまで脇役です。うなぎの味を消さないよう、少量ずつ試すのがおすすめです。

ワサビ

山椒の代わりに使いやすいのがワサビです。

うなぎの白焼きをワサビ醤油で食べるように、ワサビとうなぎの相性はよく知られています。蒲焼きに合わせる場合も、甘辛いタレと脂の旨みにワサビの爽やかな辛みが加わり、後味がすっきりします。

特に脂がしっかりのったうなぎには、ワサビを少し添えると味が引き締まります。つけすぎると辛みが勝ってしまうため、少量から試してみてください。

七味唐辛子

七味唐辛子も、うなぎに合わせやすい薬味です。

七味には、唐辛子のほかに陳皮やごま、麻の実、山椒などが含まれているものもあります。そのため、蒲焼きのタレと自然になじみやすく、香りと辛みをほどよく足してくれます。

山椒より少し辛みを出したいときや、味に変化をつけたいときに向いています。

柚子胡椒

柑橘の香りを楽しみたいなら、柚子胡椒もおすすめです。

柚子の爽やかな香りと青唐辛子の辛みが、うなぎの脂をすっきり感じさせてくれます。特にタレが濃いめの蒲焼きや、香ばしく焼いたうなぎとよく合います。

柚子胡椒は塩気に注意

柚子胡椒は塩気が強いものもあります。

つけすぎるとタレの味を邪魔してしまうため、箸先に少し取るくらいで十分です。香りを足す感覚で、控えめに使うとまとまりやすくなります。

鰻師 卓

山椒を知れば、うなぎの味わいもひとつ深くなるってもんだ。ひと振りにも、ちゃんと理由があるんだぜ!

山椒を知ると、うなぎはもっと美味しくなる

うなぎに山椒をかける理由には、川魚特有の香りを和らげる昔ながらの知恵や、脂の濃厚さをさっぱり整える薬味としての役割があります。

現代のうなぎは、養殖や調理技術の進歩によって、昔ほど臭みを気にせず楽しめるようになりました。それでも山椒が添えられ続けているのは、うなぎの旨みを引き立て、後味を心地よく整えてくれるからです。

ただし、山椒はたくさんかければよいものではありません。まずは何もかけずに一口味わい、そのあと少量ずつ足していくと、うなぎ本来の味と山椒の香りをどちらも楽しめます。

山椒をかける、かけない。ご飯に忍ばせる。ワサビや七味で変化をつける。楽しみ方はひとつではありません。

次にうなぎを食べるときは、山椒のひと振りにも少しだけ意識を向けてみてください。いつもの蒲焼きが、もう一段深く味わえるはずです。

山美世のうなぎ

届くのは、老舗の仕事。

うなぎ処 山美世 六代目店主 渡部 卓

島根県松江市にて大正時代から続く「山美世」の現当主。 代々続く秘伝のタレを守りつつ、脂を落とさず鰻本来の旨味を引き出す「地焼き(関西風)」の技術を研鑽。「鰻は生き物であり、一尾として同じ個体はない」という信念のもと、季節や個体差に合わせた火入れを徹底。

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